『東薫/東薫酒造』紀行

 この日最後に訪れたのは、佐原の名門「東薫」の東薫酒造です。東薫酒造といえば「二人静」「叶」と吟醸造りで有名です。特に杜氏の「及川氏」は南部杜氏組合の会長を務めた「現代の名工」とも言える存在です。はたしてお会いできるでしょうか?

 佐原といえばかつては水運の要所、宿場町として栄えました。またお酒を飲まない人も全国を測量した「伊能忠敬」は知っているでしょう。その生家のあるところとしても有名です。実はその伊能家もかつて造り酒屋でした。
江戸時代から佐原は「関東灘」といわれ、酒造りの名産地として知られたのでした。東薫はその流れを汲む歴史のある酒蔵です。

 さてその東薫のあるところは佐原の市内の程中央に鎮座しています。「え!こんな所でお酒が造れるの?」て所です。蔵ではいつものセールスさんが出迎えてくれ、早速案内して頂きました。

 東薫の蔵は他の地方の蔵とは構造が異なり、両側に門のように建物が造られ、間口が狭くウナギの寝床のように奥に細長い構造です。この特徴は佐原の他の蔵でも同様で、ほど近い神崎の仁勇でも同じような構造が見られる。
きっと大八車が活躍していた頃は、流れ作業がしやすいよう横並びに施設があるのが合理的だったのだろう。(最新の醸造所は、上から下に作業をする縦型が主流となっている。)

 蔵の中には取り立てて珍しいものはないが、古い建物と比較的新しい建物を併用して仕込んでいるようだ。したがって作業は必ずしもいいとは言い難い。
面白いのは醸造タンクが口を除かせる仕込み部屋にお座敷を敷いた一角があって、ナニをするのか尋ねると、酒蔵祭りにはここで歌謡ショーや落語を行うそうだ。普段は見学人に対しての酒造りの講演や接待を行うそうです。すぐ隣ではお酒がぶくぶく泡を立てている所でですよ。ただここはお酒の発酵が盛んなときはガスが充満して気分が悪くなるときもあるそうです。

 一頻り見学が終わったところで、それとなく及川杜氏の所在を尋ねると「ナント!ご在中のこと」。してやったり、急遽ご対面と相成りました。
初めてお会いする及川さんは、お年の割には(失礼!)大柄でがっちりした体格でした。たくさんお話しして頂きましたが印象に特に残ったのは酵母の話。
総の米(千葉の酒米)、無濾過生原酒と話は続き、「昔と今では酒造りに変化はありますか?」の問に、
「昔は味を決めるのも、酸を出す出さない、甘辛も香りも全て造り手のさじ加減に掛かっていました。ですから温度管理にしても、酸が出ないようにモロミと相談しながらじっくりじっくりやった訳です。ナニも良く分かっていなつ訳ではないですから…試行錯誤ですよ。
でも今はいい酵母がありますから何でも思いどうりに出来てしまいます。温度管理も(設備がいいので)昔ほどは気遣いしなくてもいいようになりました」

「素人でもできますか?」
「全くの素人では無理でしょうが、昔ほどは苦労はしないでしょう。」
 
 なるほど最近酵母が脚光を浴びている訳が分かったような気がします。杜氏が少なくなり社員で造りところが増えた訳のひとつも・・・。

「ところで最近純米酒が脚光を浴びていますが、東薫さんは吟醸が主体ですよね?」
「そうですね今まで吟醸酒を一生懸命やってきましたから。これからの課題だと思います」
「純米酒の“卯兵衛の酒”や“夢童”はとってもいい酒ですね・・・アハハ」

 なかなか興味深い話が聞けました。ナニにも増して及川杜氏のお話ですから貴重な財産となりました。
 しかしいずれは及川さんも引退するに違いない。セールスと共に私たちを案内してくれた蔵人は、社員で次世代をになう人たちだ。話の片隅には「自分たちでも出来る」という自信が見え隠れした。「自分たちだけでやってみたい」という思いが強いのだろう。
 まだ30代の彼らの意欲と若い感性が及川杜氏の知識と技術をしっかりと体得できたとき、次世代の東薫が生まれるに違いない。
それもそう遠くない未来に!その日が来るのを首を長くして待っています。(でも私の首は短いので早くしてね!)
それにしても杜氏の専用部屋の賞状に圧倒されて帰ってきました。

date=2005.2.18(Fri)/AM3:00頃
天気=曇り

【蔵内通路に】 門から蔵内に向かう通路に仕込み井戸から引かれた水口があった。軟水の水がでる。


【蔵内軒下に】 大七車の車輪。昔はこれで米も酒も岸まで運んで江戸に送ったのだろう。


【蔵内壁に】 蔵内の壁にスピーカーが…お酒に音楽を聴かせているのです。


【醸造タンク上部】 写真では分かりづらいが床に開いた丸い穴が仕込みタンクの口。つまりこの床下にずらりとタンクが並んでいる。


【貯蔵タンク】 仕込み蔵とは別棟にある貯蔵タンク。ヒンヤリしています。


【表彰状】 応接室の壁には歴代の表彰状がずらりと…及川杜氏の偉大さを物語る。


【及川杜氏と】 その及川杜氏。年齢の割にがっちりとした体格。風格が感じられました。

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