『徳明/飯田酒造場』紀行

 地元、銚子の酒蔵「徳明・飯田酒造場」に訪れました。訪れたと言っても同市内ですし、ここにはちょくちょくお邪魔しています。

 「飯田酒造場」は銚子駅の近く、醤油工場のすぐ近所に位置する。戦前はちがう場所にあったそうだが、戦災でここに越したそうだ。この日は丁度、純米大吟醸を搾っているところへ出くわした。

 飯田酒造場は明治元年の創業だという。現在の飯田社長は四代目だそうだ。飯田さんは普段、奥さんと二人で酒蔵を切り盛りしている。二人で洗瓶から火入れ、瓶詰めまで、全ての作業をこなす。
醸造石数は約100石だという。たぶん、日本一小さい酒蔵の一つではあるまいか?

 私は5〜6年前から飯田さんに出入りさせて貰っている。毎年、酒造りにも参加させて貰ってもいる。
地元の酒蔵ということもあるが、それよりここの社長の強烈な個性に惹かれるからだ。

 ここの酒に「がんこ者」という酒がある。飯田社長は、まさにその酒そのものだ。職人仇でシャイな性格から、私には憎まれ口ばかりをたたく。
挨拶は「最近、(お宅は酒が)売れないねー」が定石。
しかし酒造りにかけるこだわりは、誰にも負けないものがある。

 飯田酒造では、酒造りもがんこ一筋。飯田社長はこういいます。「ウチは全量特定名称酒です。造りが少ないので上撰はこれ、佳撰はこれと造り分けられない。使用する米も総量で好適米使用率は70%以上、県内一高い。また造りが少ないので、全ての酒に大吟醸並の手間暇がかけられる。大吟醸酒も佳撰も同じ行程でつくっている。」

 酒造の時季、11月から3月までは岩手から三人の蔵人がやってくる。今のグループになって3〜4年になる。蔵はにわかに活気づくが、それでも総勢5人である。「今年の出来はどうですか?」と尋ねると、「最高だよ!」と元気に答えられた。

飯田社長に酒造りのモットーについて尋ねると、
「モットーと言っても、毎年同じように酒造りをしている。同じに造っても、毎年同じには出来ない。その差が最小限になるよう、最大限の努力をしています。
お酒は甘いだけでも辛いだけのものではない。そのバランスが大切です。ウチの酒は最近流行の辛くて薄い酒ではありません。だからよけいバランスが難しい。それが崩れると旨味がただの雑味になってしまいます。旨味こそ「徳明」の持ち味、濾過も最小限しかしていません」

 社長はそういうが、きれいな酒になれた若いユーザーには、なかなか受け入れてもらえない場合もなるだろう。もう少しきれいな酒を造って貰いたい願望もある。しかしそれは叶わないだろう。自分の「よしっ」と思った酒しか造らない。そこに「徳明」の良さがある。そのかわり、いいと思ったら一途につくる。

 最近「無濾過酒」など酒本来の旨味を残した酒が好まれる雰囲気が出てきている。
精米歩合を競い、きれいになり過ぎた酒からの反動だろうか?
もしかすると、「徳明」がもっと見直される日が来るかもしれない。
 しかし現時点で後継者は決まっていない。
この日、槽からしたたり落ちている純米大吟醸を呑ませて貰った。良くも悪くも、いかにも徳明らしい味がする。
 この味が楽しめるのはいったいいつまでであろうか。

date=2002.2.25(Man)/PM 3:30頃
天気=晴れ

【蒸し米】 朝5時蒸し米が出る。 甑で蒸された米は全て人手で運ばれる。


【放冷】 甑より運び出された蒸し米は、素早く広げられ一定温度まで放熱する。 高熱の蒸し米に素手での作業は火傷しそうに熱い。


【麹室内1】 ここで麹を培養する。奥に見えるのは麹蓋。徳明では全量麹蓋を使用する。


【麹室内2】 麹室に運ばれた蒸し米は広げられ麹菌を植え付けられる。


【槽(ふね)】 徳明では全量「槽(ふね)」と呼ばれる古式の搾り器で酒を搾る。写真は純米大吟醸を搾るところ。一部はしずく取りをしている。


【蔵内部】 貯蔵タンクが左右に並ぶ。作業用の足場が天井から釣られている。


【大釜】 手前がお湯用の小釜。奥は米を蒸す大釜。大釜の上に甑という蒸し器をのせて米を蒸す。
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