『飛鶴/森酒造』紀行

 この日最後の訪問地は久留里の「森酒造店」だ。以前久留里には訪問したが、残念ながらこちらにはお寄りできなかった。念願の蔵巡りである。

 小泉酒造から地図を頼りに道を進むが、さすが『森』酒造とあってものすごい山中の道。途中道路がものすごく細くなって「まちがえた?」と不安・・・こんな所に酒蔵あるの?と思っていたが、程なく無事にたどり着きました。

 しかし今までの酒蔵巡りでもっとも難所?酒造りにはここしかないという、大自然のど真ん中の酒蔵です。
たしかに蔵への入り口周辺には、最近建った今風の家が点在するが、その周囲は秘境といってもいいほど。「これならいい酒が出来るに違いがない」と、心躍らして訪問開始です。

 蔵の敷地内にはいると正面に母屋、左手に倉庫と酒蔵がある。一応訪問の予定は入れていたがキッチリとした時間は決めていなかった。蔵にも母屋にも人の気配なし、呼べど叫べど返事はない。どうしようか連れと思案している内にトラックが入ってきた。
配達から帰ってきた蔵元「森泰郎」氏だった。

 森さんとは初対面。挨拶を済ませて早速お話を聞かせて頂きました。

 醸造所は比較的こぢんまりした印象。倉庫から釜場、麹室へと連なる一般的な配置だ。醸造所の前に井戸が掘ってあって、久留里自慢の自然水を仕込みに使う。
しかし同じ久留里でも水質は違うようだ。山中で他の(久留里の)蔵より高地に位置するこの蔵では、中硬水の天然水が湧き出る。飲んでみるとスッキリとした印象だ。

「杜氏さんはどちらですか?」
南部杜氏です。同じ久留里の吉崎酒造さんと掛け持ちしてもらっています。
初めに吉崎さんを仕込んで、年明けしてから内の方に来てもらいます。あとは蔵同士が近いので発酵の具合を見ながらいったり来たりです。

「軟水の吉崎さんと硬水の森さんでは杜氏さん苦労しますね?仕込量はどのくらいですか?」
もう杜氏にはこのスタイルで結構長くやってもらっています。苦労はあるでしょうが慣れたのでは。仕込量は20〜30石ほどです。少ないでしょう。

 これは驚きです。20石とは余りに少ない。自分が知っている限りでは圧倒的に最小(全国にはあるが)だ。
一石とは一升瓶で100本に相当する。20石なら2000本。売れる酒屋ならここの酒蔵をまるごと買える量だ。

「20石とはビックリしました。自醸酒でこんなに少ないのは初めてです。造りはどうしていますか?」
100kgほどのタンクを杜氏と家族で数本仕込みます。大吟醸は一年おきに仕込んでいます。あとは純米酒、本醸造酒、普通酒などです。最近は特定名称酒が増えてきました。
「販路はどうですか?」
ほとんどが地元で消費されます。あとは鴨川など観光地(ホテルなど)も大事なお得意先です。

 試飲したお酒は、スッキリとした口当たりで程よいコクもありきれいな酒質だった。しかし醸造量が少ないのでアイテムも多くはない。

「最近、無濾過酒など流行っていますがそういうものはありませんか?」
やりたくない訳ではないですが、販路の問題などありますね。無濾過だと品質管理をしっかりしないといけないですし、返品なんかも出来ませんので・・・
「全国では無濾過でも非常にきれいな酒質の酒が数多く出回っています。きれいな酒質の酒は濾過しすぎてかえって濾過癖が出る場合もありますね。ここの酒は無濾過で酒質が生きるような気がしますが。」
醸造試験場の先生方にも同じようなことをいわれました。無濾過酒に関しては課題にしておいて下さい。
「それにしても20石だったら、もしブレークしたらすぐに売り切れになってしまいますね。」
「あははは・・・・(一同)」

 久留里地域の酒蔵はどこも若い蔵元(経営者)で、他の地域より連帯感が強く、活気には触れているような気がする。これはちゃんと跡取りが次代を引き就いていることが立証している。
豊かな自然に恵まれ、また良水に恵まれていることも大きい。
 また近くに同年代の蔵元がいることで、刺激を受け切磋琢磨しているのだろう。

 森酒造は非常に小さい蔵だが、小さい蔵でもやっていけるひとつのヒントをくれたと思う。
 他の蔵と杜氏を共有し、一造りを小さくし人員を最小限で抑える。大きな施設を必要としないので少ない人員でもどうにかやっていけるのだ。
 大きな施設で造りを行うと、(本数を少なくしても)多くの酒が出来てしまう。微調整は出来ない。売れなければ翌年に持ち越し、翌年の造りは休まなければならない。場合によってはその翌年もだ。
一造りが小さければ微調整が効く。売れる分だけつくれば毎年新鮮な酒を販売できるのだ。

 お酒はいい。ここのお酒を売りたくなりました。今年、来春にはぜひ!お楽しみアレ!

date=2005.7.14(Wed)/PM3:30頃
天気=曇り

【蔵内】 決して新しくないが清潔に保たれている。



【酒粕】 仕込みの時期ではないが冷蔵庫内には酒粕が積んであった。



【麹室】 非常に簡素で清潔に保たれている。ここがキレイかどうかがいい酒造りのポイント。



【甑】 お馴染み、立派な和釜を備える。



【槽(ふね)】 昔ながらの圧搾機。酒蔵によって若干形式が異なることが分かる。



【試飲させてもらいました】 きれいな酒質のお酒たち。連れは全部飲みました。



【母屋】 蔵の隣が母屋です。わかりますか、軒下に1メートルもあろうかという巨大な蜂の巣が!


【蔵元と】 蔵元の森泰郎さんとパチリ。私のデブ振りが引き立つ(^^;)ほどスリム。
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