『木戸泉酒造』紀行

蔵入り口−酒林
 今度の酒蔵紀行には連れがいた。詳しくは紹介できないがお酒のプロだ。千葉の酒を愛する気持ちとティスティング力は遙かに自分をしのぐ。彼と大網で待ち合わせ私の車で一路南総を目指した。最初の目的地は大原の「木戸泉」である。
 10時過ぎに木戸泉に到着。まず目に入ったのは上の写真にもある巨大な酒林(杉玉)である。こんな巨大な酒林は見たこともない。軽く直径2メートル以上有ろう。それをくぐって事務所に向かい蔵元の荘司氏と初めて挨拶を交わした。連れはすでに面識があったので快く歓迎して頂いた。

 挨拶をすませ蔵の向かいにあるギャラリーに通された。木戸泉には昨年まで画家の蔵人がいたそうでたぶんその方の絵画などの展示に使われたのだろう。昭和レトロを感じさせる古い建物だ。そこで早速蔵元とお話をした。話の中心は造りに集中した。

 「高温山廃造りについて教えて頂けますか?」
「高温山廃造りは実にシンプルで理にかなった造りです。この仕込みの特徴は酒母の原料を最初55度まで温度を上げ、一度ピュアな状態にする訳です。55度まで上げると他の雑菌が押さえられ乳酸菌だけが活動できる状態になります。ここで生の乳酸菌を添加して酵母も加えます。ここで乳酸菌はどんどん乳酸を出して雑菌の繁殖を防ぎ、その中で酵母がタンクの中の栄養素をどんどんアルコールに変えるわけです。」
 「生の乳酸菌を使うのはどういう意味がありますか?」
「酒造りに作用する乳酸菌は2種類といわれています。それを純粋培養して酒母に添加するわけです。速醸(モト)では人工乳酸をいれますし、生モト系では自然界の乳酸菌を取り込みます。乳酸菌自体は自然界にいくらでもありますから、ほおっておいても飛び込んでくるんですよ。純粋培養した乳酸菌を添加するのは安全をきっするためですかね。乳酸菌が元気に活動できる環境を整えるんですよ。」
 「もう一つの特徴、長期熟成酒について教えた下さい。」
「きっかけはもともと技術顧問であった故古川董さんが『ウイスキーでもワインでも古い物に価値がある。日本酒でもそういう酒が出来ないか』との考えから始まったこと。そのためには長期貯蔵に耐えうるしっかりとした力強い酒が必要だった。それに最適だったのが『高温山廃仕込み』だったんです。昭和31年から今の仕込みを始め、最初から長期貯蔵を目指していました。」
 「以前と造り(味わい)は変わりましたか?」
「造り事態は全く変わりませんが、以前と比べると若干飲みやすくなったというか、まろ味が出てきた感じはしますね。たまにいるんですよ昔の雑味の多い酒が旨かったという人が。そういった意味では淡麗になったというよりは“味のバランス”に気を遣っていますね。」
 「吟醸酒は造られませんね?」
「若いとき飲んだ吟醸が旨くなかったんで造ろうとは思いませんでした。確実に旨いモノが出来るなら造ってもイイですが、山廃の吟醸もありますしね。ただウチのスタイルもあるし、それなりにコストを掛けるならそれだけの酒が出来なければしょうがない。ウチの酒の特質を考えると吟醸が必要とは思えない。」

 その他にも延々と話は続きまして、その後蔵元で編集したビデオを見たあと、ようやく蔵の内部へ案内して頂きそこで杜氏の秋葉氏とご対面。
蔵で目をひいたのは木製の洗い桶や見たこともない木製の巨大な甑(蒸し器)。適度に蒸気が漏れる木製が蒸し器には最適だそうだ。「これだけは変えられない」っとおっしゃった。
麹室は左右に2つ有り合理的に作業が出来る。麹蓋は通常の3〜4倍はあろうかという大型の物。(これも初めて見た)

 「高温山廃仕込」もそうだが合理性と頑固なまでの伝統が融合しているのが手に取るように感じられた。蔵元もしっかりと自社の酒を自覚していて、これなら旨くて個性的な酒が生まれるのは必然だと感心させられた蔵紀行であった。熱心な説明についつい話も弾んで予定時間を大幅にオーバーして蔵を後にした。

高温山廃仕込みについては説明不足であろうと思われるので後日別ページで解説します。

date=2004.2.11(Wed)/AM10:00頃
天気=曇
蔵内部
【蔵内部】密閉型タンク(右)と開放タンク(左)が整然と並ぶ。内部は画像よりかなり暗い。 


洗い桶
【洗い桶】 今では珍しい木製の洗い桶。特に神経を使う仕込み時はこれを使用する。


木製甑
【釜場】 博物館でも行かねばお目にかかれない木製の甑(蒸し炉)


麹室と麹蓋
【麹室】 大型の麹蓋にできあがった麹が見える。


もろみタンク
【もろみタンク】 発酵の終了期のもろみを利いたく


蔵元と杜氏
【蔵元と杜氏】 蔵元・荘司氏(右)と杜氏・秋葉氏(左)
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