『稲花酒造』紀行

稲花酒造全像
 サーファーのメッカ「九十九里浜」の南端、一宮にある『稲花酒造』に行ってきました。
 一宮から白子、白浜の海岸沿いは良質な海水浴場に恵まれペンション、ホテルが立ち並ぶ若者に人気のスポット。稲花酒造はそんな喧噪とは無縁の静かな農村地帯に存在する。

 東金から続く国道から少し入ったところに蔵はあった。まず目に入ったのは母屋だ。二階屋の歴史を感じさせる建物。庭には働き人が草むしりをしていた。
左手に目を移すと江戸時代の建物を残す造り蔵と立派な煉瓦造りの煙突。その傍らにある事務所に専務を訪ねた。
 私はこの蔵に来るのは初めて、蔵元に会うのも初めてだったが事務所から出てきたのは実に穏やかな紳士でした。その蔵元とそれを促するような奥さんに蔵を案内してもらった。

 先ほど書いた煙突のあるところが釜場になっている。それから北に向かって酒母室、仕込み部屋、麹室と一直線に続く。
すでに仕込みを全て終わった蔵内はひっそりと暗い。
 まず奥さんが説明してくれた。
「詳しくは分からないが江戸時代の文政年間には造石高150石があったと古文書に載っているそうです。建物の一部は江戸時代のものです。建て増し建て増しをして今の形になったが少々使いづらい面もある。
 酒母は全量速醸です。山廃、生モトもやってみたいがやるなら全量でないと臭いが移ってしまう。また、山廃は癖もあるし皆が受け入れてはくれないでしょう。」

 仕込み水は長南町から汲んでくるそうで、周辺には畑もゴルフ場もない軟水の良質な天然水を活性炭で濾過して仕込みに使う。
洗い物用には蔵内の地下水を使うが浄水器を透して徹底的にきれいな水を使うという徹底さだ。
 続けて奥さん
「ウチは造石数も少ないですが、一本当たりの仕込量も少量で仕込みます。それを一冬で28本ほど仕込む。少量仕込はオリジナル酒などに対応するにも適しています。それに米は全量手洗いしますので仕込量が多いと朝から晩まで米を洗ってないとしょうがないでしょう。」

 稲花酒造では酒販店からのオリジナル酒も積極的に取り組んでいるようだ。オリジナル酒は注文によって微妙に造り分けなければならない。たいへんな作業だ。またそれだけ技術の裏付けがなければできない。
 ここで奥さんは用事があるということでご主人にタッチ。麹室と圧搾機を見せてもらう。
麹室は広くて清潔に保ってある。全量麹蓋で製麹をするそうだ。釜場から麹室まで遠いので米を運ぶキャリーがある。麹室の前は板張りの踊り場の様になっていて珍しい造りである。

 圧搾機は旧式の漕(ふね)が二機あるが現在では自動圧搾機をつかう。これで杜氏がくどくほど歩留まりの悪い搾りをする。粕歩合は35%程でそれだけ浅く搾っている訳です。美味しい酒粕が期待できます。

 奥さんからの話が多くなってしまいましたが、ご主人はお婿さんだそうです。そのせえかここの酒は甘みがあってのど越しがいい酒です。昨年は地元の酒販店の有志がオリジナル酒をここの酒で売り出して好評だったようです。
 そんなこともあって経営は盤石だと思っていましたが、やはり厳しさは感じているようでした。
いい酒を造っていれば売れる時代ならいいのですがそれだけでは難しいのも現実。
 どうかいつまでも夫婦水入らずでいい酒を造りつつけて下さいますよう願っています。

date=2003.5.22(thu)/AM 11:40頃
天気=薄曇り

【釜場】 すっかりおなじみの甑による釜場です。



【放冷機】 大吟醸は機械を使わず人手で米を広げて放冷するが、一般米はこれで冷やしてエアーシューターでで米を運ぶ。



【酒母室】 少量仕込みなので酒母タンクが多い。造りの時期はフル稼働。



【仕込み室】 現在は搾り終わった酒が冷蔵装置の備わったタンクで静かに眠る。


【麹室】 広くて使い勝手のよい麹室。右手に見えないが麹蓋が積んである。


【ラベル貼り】 小さい蔵ではラベル貼りも手作業が常。大吟の無濾過生酒を貼ってました。うまそー!


【ご夫婦】 蔵の娘さんである奥さんとお婿さん(何度もごめんなさい)のご主人。ちなみに死んだ私の親父も婿殿でした。
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