『聖泉/池田酒店』紀行

 夏の酒蔵紀行は内房から久留里へ向かいました。
館山自動車道をひたすら南下、国道127号をさらに南下して、山と海がせめぎ合う狭い空間を走る道路を一旦通り過ぎて引き返しました。
 これは分かりません。カーブのつづく道路の崖下につづくさらに狭い道路を降りたところに目的地の「池田酒店」がありました。
 本当にこんな所に酒蔵があるのが信じられません。どうやってトラックが入ってくるんでしょうか?前は山、後ろは海に挟まれたすぐ近くを流れる川の扇状地のわずかな平地に蔵は建っていた。

 立派な造りの門をくぐって事務所に顔を出しました。事前に連絡をしてあったので顔なじみの営業の方が出迎えてくれました。その方と若い蔵人に伴われて早速蔵の見学です。

 池田酒店は歴史のある蔵元でビールの卸も兼業している。これは珍しいことではなく全国でも多いことだと思う。倉庫の前には出荷を待つビール瓶などが積まれていた。
 まず見学したのは精米所だ。ここでは珍しく自社精米器を持っている。精米器を持っていない蔵は精米済みのお米を買うのだが、ここでは玄米で買って自社精米するのだ。自社精米の強みは微妙な精米歩合にも対応できると言うところだろうか。

 仕込み水の事を尋ねてみた。
「海が近いですが仕込み水は硬水ですか?」
「いや軟水ですね。すぐ前の山から降りてくる地下水を使っています。海は近いですが海水が混じっていると言うことはありません。低いところから高いところへとは水は流れませんから。清らかな軟水で仕込んでいます。」
 先ほど説明したように蔵のすぐ前まで山が断崖絶壁で迫っている。この先は房総の山々が連なっているのだ。その山々に降った雨がやがて地下水となって下ってくるのだ。

「昔は軟水は嫌われたそうですが?・・・」
「昔のことは良く分かりませんが、今ではウチの酒に良くあっていると思います。ウチは口当たりのやさしい酒が多いですから」
 最近こういう話が蔵元で多く聞かれる。酵母の解析や温度管理を初めとした醸造技術の向上で軟水でもその水にあった造りが容易になったと言うことでしょう。日本全国で軟水造りの名酒が出てきています。

 精米所を出て反対側にある釜場に向かう。米の蒸しは昔ながらの甑を使い、その奥にある麹室に蒸し米を引き込む。残念ながら夏の今ではその光景は見られない。池田酒店の蔵は昔からある施設を改良しながら使っている。従って建物は平屋造りで、L字型に作業が流れるようになっている。
ぐるっと回って「仕込み蔵」、圧搾機へとつづく。ここでは昔ながらの「槽(ふね)」もあるが、主に「薮田(やぶた)」と呼ばれるアコーデオン型の自動圧搾機で搾る。きれいな酒粕が出来るそうだ。
そこを出ると貯蔵タンクが並ぶ貯蔵庫につづく。出荷を待つお酒がゾロリと並んでいた。

 一通り見学を終えて事務所の2階にある応接室に通された。ここでお酒を試飲しながら(私は飲みませんでしたが連れが飲みました。残りはお土産にいただきましたが…)さらに酒造りについて尋ねました。
「最近、聖泉の酒質は変わってきましたね?」
「ま〜大きく変わったと言うことはありませんが徐々に変わってきたと思います」
「以前が吟醸蔵の淡麗なイメージが強かったと思いましたが、最近はいい純米酒が出てきました」
「やはりこれからは純米酒が主流となると思います。まだまだこれからですが。」
「無濾過生原酒やその他でも生原酒が出てきてどれも美味しいですね。中でも県産米の「総の舞」を多く使っていますが、その辺の経緯と苦労はありますか?」
「やはり地元の米で地酒を造るという意義があります。この流れもやはり全国的にあります。ただ総の舞は使いやすい米ですが酸が出やすいのです。その酸を出過ぎないようにするのが杜氏の苦労だと思います。」
「最初、純米無濾過生原酒は純米吟醸でしたね。ところが翌年から特別純米に変わりました。どうしてですか?」
「やはり価格が高いという声が多かったので・・・店頭で売りやすい価格設定を考えました。正直売れなかったんですよ」
「最初の純米吟醸は1680円(税込)でしたが香りが素晴らしく全国クラスのいいお酒でした。価格相応の価値があります。もちろん特別純米もいい酒ですが純吟に比べるとワンランク落ちる。今の消費者はいいものにはそれなりのお金を使います。ぜひ純米吟醸で無濾過生原酒を出して下さい。」

 今回は社長とは残念ながらお会いできませんでしたが私と同年代の若い蔵元だ。最近全国で若い蔵元の元、新たなブランド、戦略が登場し成功している。お酒の世界も若い感性が必要になってきた。
 今年に入り池田酒店は近所の原本家(鹿野山)と合併して新会社を設立(18年3月吉日)した。酒造りは今までどおり続けるそうだ。
これも生き残りの一つの方法だと思う。ぜひとも21世紀を生き残って千葉の酒造りに寄与してもらいたい蔵である。頑張って下さい!

date=2005.7.14(Wed)/AM10:00頃
天気=曇り

【門前】 池田酒店の門構えです。昔ながらでトラックはどこからはいるのでしょうか?




【甑(蒸器)】 お馴染みの甑(こしき)です。これで酒米を蒸し上げます。




【洗米機】 通常はこれでお米を洗います。大吟醸は手洗い。




【山田錦40%精米】 酒造好適米「山田錦」を大吟醸用に磨いたところ。白く見えるところが芯白です。




【麹室(むろ)】 昔ながらの麹蓋を使い麹をつくります。




【貯蔵庫】 瓶詰めを待つお酒がタンクに入ってずらっと並んでいます。タンクの蓋の新しさに目に尽きました。




【東京湾へ】 蔵をでて3〜4分歩くとすぐ海へ出ます。本当に海の近くなんですね。
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